古本屋

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嫌な、光景だ。頭に過ぎるのは、朝のあの本の言葉だ。 傘が女の体を突き破った。夕日が女を彩っている。近くによっていたのか、血が道路を伝ってこちらへたどり着いていた。 グサリ 喉元、胴体、頭、どうやら何も考えずにその体を傘で突き破っていた。人の体を傘で突き破るにはどれだけの力が必要なのか、どれだけ傘が鋭いのか。 本の装丁をするりと撫でる。嫌な、ことだ。分かってしまった。憶測でしかない。だが、思い込みであっても、確信してしまった。 この本は人の皮で作られていると。 嘘であって欲しい。この本は人皮装丁だ。 1度でも思ってしまったらおしまいだった。それ以外と考えられない。 傘で女を刺殺したその殺人鬼は満足したのか、血だらけでこちらに向かって歩いてくる。恐怖でおれは逃げられない。もしかしたら、既に気を失っていたのかもしれない。 おれは、自分の胴体を貫く傘をみた。その次、顔に迫る傘を、みた。 意識はそこで途切れる。
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