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「え……?」
俺は、首を少し左に向け、立て続けにスマートフォンの画面をつけた。光が顔にあたる。
また道の左側を見る。そして、画面。
「……ここ?」
スマートフォンの中で笑う麗さんとその姪っ子の背景が、こんなところにあったのだ。
あまりの唐突な出現に、呼吸が荒くなる。落ち着け。本当にここがその家なのか確認しなければならない。
数歩近寄って見上げると、イメージしていたよりも高い石垣の塀、そしてイメージしていたよりも大きく、威圧感のある白塗りの外壁がそびえ立っている。何度も手元の写真と見比べる。やはり間違いは無さそうだ。大きなガラス窓から灯りが漏れている様子はなく、人がいないような静けさ。
気付けば、「腹が減っては戦ができぬ」などという言葉は頭の隅の隅へ押しやられていた。
諦めるのはまだ早い。もしもインターフォンを押して知らない人が出てきたら……出てきたら、そのときは正直に訪ねねる家を間違えたと謝ればいい。ここまで来てしまったんだ。もう後退する必要はない。
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