2 出会い

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 石垣の奥にある階段をのぼり、大きな扉の前に立った。震える人差し指でインターフォンを押す。奥の方からチャイムの鳴る音が聞こえるが、人が反応する気配はない。やはり、留守中か。一歩下がってため息をつく。と、右手に見えるテラスの奥で灯りがついた。  ……いや、いるのか? 心臓がドクドクと脈打つ。もう一度インターフォンを押す。五秒。十秒。二十秒。反応がない。  待っているうちに嫌な妄想が次々と頭に浮かぶ。麗さんが急病で倒れているという可能性は考えられないだろうか。玄関に向かいたいが、身体が動かない、という可能性は? もしかしたら、泥棒が入ってきたところに鉢合わせて身動きもとれないような状況かもしれない。居てもたってもいられなくなり、勢いよく大きな扉の取っ手を掴む。  ガチャッ、ギギィッ……。  重苦しい音と同時に、扉が開く。鍵がかかっていない。ますます怪しい。嫌な妄想で頭がはちきれそうになる。俺は勢いよく家の中に入った。 「麗さん?」  呼びかけると声が辺りに反響する。奥のドアから灯りがもれているが、こちら側は辺りが何も見えないほど暗い。それでも十分に分かるのは、この場所がとてつもなく広いということだ。
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