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「誰ですか……?」
目の前の子どもはもう一度尋ねる。今度はその声が先程よりも幼く聞こえた。もうやけくそだ。俺は回らない頭で答えを振り絞る。
「お……俺は、サンタだ」
「サンタ、さん?」
「そう、サンタクロース。少し早いが、今日はプレゼントをあげる子の家を下見してたんだ」
子どもはドアからこちら側へおずおずと歩み寄る。
パチ。
音がしたかと思うと、玄関の照明がついた。数メートル先にいる子どもが壁のスイッチに左手をつけ、棒のように硬直したままでこちらを見ている。透き通るような白い顔が心なしか青ざめている。
「サンタさん……じゃない、です」
「あ、いや、これは」頭を下げて自分の体を見る。そうだよな。今の俺の外見にサンタクロースの要素など一つもない。「見た目はそう見えないかもしれないが……実は、俺はサンタクロースの見習いなんだ」
苦しい。かなり苦しい言い訳をしどろもどろでする。目の前の子はきょとんとしたまま言葉を繰り返す。
「見習い?」
これは予想以上の好感触だ。押し通せるか? 調子に乗った俺は言葉を続ける。
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