シンタ・クラース

２ 出会い

「見習い。そう、えーっと、サンタさんのお手伝いをしている人ってところかな」

「サンタさんのお手伝い！？」

　子どもは頬を紅潮させて、一度だけぴょん、と跳ねた。喜びが抑えきれなかったのだろう。白いレースのスカートと肩まで伸びた猫の毛のような髪が、同時にふわりと揺れる。

「そうそう。えーっと、君、名前は？」

「すねくら、ちかです！　四歳です！」

　チカは丁寧に年齢まで答える。おそらくこれが挨拶の定型文として彼女に刷り込まれているのだろう。

「チカか。賢そうな名前だ。きっと将来立派な大人になるよ」

　真っ黒な上着に鈍色のズボンを身にまとって知らない人の家に侵入する怪しげな俺よりは。心の中で付け加える。チカはというと、両手を口元に当て、溢れ出る喜びをとどめておこうとしているようだった。

「ところでチカ。この家には君のお父さんやお母さんはいるのかな？」

　チカは首を横に振る。

「まだ帰ってこないです」

　セーフ！　心の中で声を大にして叫ぶ。いや、しかし。妙に胸がざわつく。こんな小さい子どもを置いて遅くまで帰ってこない親などいないだろう。不審に思って再度聞く。