11人が本棚に入れています
本棚に追加
11月最後の休日。寒空の下、俺は彼女に振られた。
二十五歳にもなって初めて、振られるとはこういう感覚なのか、と知る。人生で初めての体験だ。これまでは、好きになった人がいても、付き合おうとかどうなりたいだとか、そんなことはあまり考えてこなかった。実際のところ、考えたって行動にうつせる勇気もない。考えるだけ無駄だから考えなかった、とも言える。
もちろん、相手から好意を向けてくれる分にはありがたくそれを受け取ってきた。が、付き合っている自分に苦しくなってそのうち別れを告げる。その繰り返しで今に至る。
自分から「付き合ってください」と申し出るのも、付き合った彼女から振られるのも、何もかもが初めての体験だ。
これまでに別れ話をした彼女たちの表情が浮かび上がる。
「別れてください」
話の核心に触れたとき、目から大粒の涙を流したあの人。悲しそうに目を伏せたあの人。傷心ととれるその表情から、俺は彼女たちの気持ちを分かった気になっていた。なっていただけだったんだ、ということが、今になって分かる。
そうか。振られるって、こういうことだったのか。
最初のコメントを投稿しよう!