2 出会い

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「あの。もしよろしければ、これ、いりませんか?」  どうせ捨てようと思っていたところだ。喜んで食べてもらえた方が、このケーキも嬉しいだろう。俺はケーキ箱を老夫婦に差し出す。 「あら、買ったのに食べないの? どうしてかしら」 「こら、お前。あまり人様のことをずけずけと訊くものではない」  老夫が眉をしかめて老婦をたしなめる。これ以上誤解をさせないように、正直に話した方が良さそうだ。 「恥ずかしい話ですが、一緒に食べようと思っていた彼女に振られてしまって。なので、もういらないんです」 「まあ……。そういうことだったのね」  老婦は息を呑むと、無意識にそうしたのか、悲しそうな顔で老夫の腕を引き寄せた。どこか海外の貴族のような気品が漂う人だ。美しく年を取るというのはこういうことなのだろう。 「それを聞いたら余計にいただくわけにはいかないわ。だって、大切な人だったんでしょう?」  何か良い案はないかしら、とすがるように老夫を見る。こちらも品位のある風貌だが、貴族とは少し違う。年老いてもなお隙のない元軍隊隊長、といった風格を感じさせる厳格な白い眉が横たわっていた。老夫は逡巡し、やがて口を開く。
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