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誤字太郎、青春を欧化する。
ピロリン。
スマホがトークアプリの新規メッセージを知らせる。
『太郎、高校入学おめでとう。一生に一度の高校生活を楽しんでね!――母より』
どうやら母から送られてきたものだったみたいだ。
俺は今年から実家を離れ、一人暮らしを始める。
小説家になりたいという夢を叶えるため、文系に強い高校を全国から探し出し、ようやく見つけたそこは実家から遠く離れていた。
俺は迷った。今まで親のすねをかじって生きてきた――のは中学生としては当たり前なのだが、とにかく俺は家事など一切手伝わず、親がしてくれることは当たり前のことだと思って生きてきた。
それが当たり前ではなくなるのだ。朝食から夕食まで自分で用意し、洗濯をして干して畳んで。部屋も掃除しなくては。
だが――俺は変わると決めたんだ。
いい機会だ、俺は一人でも生きていけるようにならなくてはいけないのだ。
俺は母に意気揚々と返信をした。
『ありがとう、母さん。夢を叶えるために精一杯頑張るよ。それからもちろん、青春も欧化するんだ!彼女作ったり、文化祭ではっちゃけたり……はぁ、今から楽しみだ!』
――僕の名前は、誤字 太郎。
どんな短い文章でも必ずひとつは誤字をしてしまうだけの、至って普通の男子高校生だ。
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