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 ――結局その日はあんまり盛り上がらなくて、彼氏には早めに帰ってもらった。  だいたい、あいつがコンビニで買ってきたの、エナジードリンクとコンドームとグミだよ! 全然駄目! いやグミは好きだよ? でも求めてたのはスイーツであって、グミじゃないし!  コーヒーショップで背後のテーブルに座る若い女の子の声に、それとなく耳を傾けていた。ちょうど話の切れ目になったので、残りのコーヒーを飲み干し、席を立つ。トレーを持ち上げる際、やや不便を感じる。なぜなら――。  え、何?  あんた、小指、怪我してんの?  カーテン閉めるときに爪が剥がれた、って。何それウケる。  言い当てられた。ぎょっとして振り向く。  こちらに背を向けた女が、四人がけのテーブルをひとりで陣取っていた。早口で楽しそうに喋り続ける彼女は、とうに次の話題に移っている。
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