亡き主人

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亡き主人

私は、昼間と夜と掛け持ちで仕事をしていました。 主人を亡くし体調が優れなかった日々が続き、それでも仕事をしなくては生きて行けません。 夜の仕事中、早退する事も暫しありました。 そんな時、新人の女の子から休みの日の昼間に突然、連絡があり 『喫茶店で会えませんか?』 と、言われたので待ち合わせして、喫茶店で仕事の相談を聞いていました。 すると彼女が 「蓮華さん、亡くなった御主人って中肉中背で鼻が高めで黒髪の短髪ですか?」 と聞かれた。 「そうだけど……。 なんで?私、写真も見せた事ないよね?」 「持ってますか? あったら見せて下さい」 私はバックから主人の写真を出して彼女へ見せた。 「やっぱり」 「なに?」 「今、蓮華さんの横に立ってますよ?」 「え?どういう事?」 「心配してるみたい。 こないだ仕事を途中で早退しましたよね?」 「ああ。 体調悪くて……。それがどうかした?」 「蓮華さんが帰るのを私、見てたんですよね。 そしたら、蓮華さんの後ろを追う様に男の人が一緒に出て行ったんですよ。御主人だったんですね……」 「もしかして霊感強いの?」 「そうなんです。 多分、側に居る事を私に伝えて欲しくて呼んだんだと思います」 「今、横に居るって事?」 「はい。立ってますよ。 蓮華さん、今日は体調良いですよね?」 「そうだね。 今日は、いつもより体調良い」 「喜んでますよ。 蓮華さんが体調が良いと安心するって」 「心配症だからね。うちの旦那は……。 あまり心配させない様にしないとね」 私は、主人が側に居ると聞いて嬉しかった。 その数週間後に彼女は突然、仕事を辞めてしまった。 理由は分からない。
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