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1. トウとセキ
「トウは強いね。」
「私から見たらそういうセキの方が強いと思うよ。」
「そんなことない。僕はただ、言い訳をするのが上手いだけだよ。」
トウは、綺麗だ。
だからこそ、汚したくなる。
その手が血まみれになっても、その口が悪態をついていたとしても、トウは汚れない。どうすれば彼女は汚れるのだろうか。
隣で今もなお淡々と人を殺し続ける彼女を横目にセキはそんなことを考える。
「セキ、仕事して。」
「もうほとんど残ってないじゃん。」
「セキがぼーっとしてるからでしょ。」
そう言ってまたトウは引き金を引く。
その度に赤い色が彼女の白い肌を染める。
そのコントラストがとても綺麗だと思ってしまうセキは、もうどうしようもないところまで自分が堕ちているのだろうと、実感する。
「セキ。」
「なあに?」
「今日の取り分、八割もらうから。」
「八割と言わず、全額どーぞ?」
「じゃあ遠慮なく。」
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