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セキもトウも、お金には困ってない。
命はお金では測れないというのに、現実はそんなこと関係なく、ブランドものみたいに扱われる命ならまだマシだと思えるほど残酷だ。
中にはガラクタ同然の値段で失われていくモノもあるのだから。
セキがそれを悲しいことだと認識していたのなんて遥か昔であって、今ではそれを葬ることで自分たちの生計を立てているのだから、そういうことを頼んでくる奴らと同罪であるんだと割り切っている。
でもたまに、本当にたまにではあるが。
こんな小さな世界で、小さな諍いのために無闇に失われていくものなら、最初から全てぶっ壊してしまえばいいのに、と。
思うことがセキにもある。
「セキ。」
トウはよくセキの名前を呼ぶ。それはセキがトウに頼んだことである。トウの綺麗な声で紡がれると、汚い僕の名前が綺麗に洗われたような錯覚を起こすから、というのがセキの考えだ。
「トウは今日の夕飯何食べたい?」
小さく紡がれたオムライスという響きを聞いて二人はは家に帰る。オムライスなら家にある材料で作れるな、なんてセキは考えながら。
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