夜の探索

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 何をしているのだろう。  門真は眉を寄せて、奇妙な駒津の動きを見守った。  しばらく袖を動かしてから、彼は一度灯りを下げた。そして一定の時間が経ってから、再び先ほどと同じ行動を繰り返す。  その動きを見つめながら――門真は、その灯りを点滅させることが、駒津にとって意味があることなのだと了解する。  無意味にこのようなことをするはずがない。  だとすれば。  今、駒津が灯りを使って何かを伝えている相手は――シヅマの民に違いない。  そこまでは探り出したものの、駒津が規則的に袖を上げ下ろしする意味が、掴みとれない。  奇妙な方法だった。  これで、何を伝えられるのだろう。  一度目と同じ時間だけ点滅させてから、駒津は灯りを弱めていつもの明るさに戻した。  光を使って、駒津はシヅマの民と連絡を取り合っていたのだ。  昨日行動を起こさなかったのは、雨だと視界が悪く、遠くまで光が届かないためだったのかもしれない。  一体何を伝えたのだろう。  それに――昨日、曲利は動かなかった。  だとすれば、いつの間に連絡を取り合ったのだろう。  夜に密会しているという自分の考えが間違っていたことを悔いながら、門真は駒津の次の行動を見守り続けた。  彼は灯りを手に、素早く階段を降り、そのまますたすたと元来た道を歩き始めた。    兵士の注意は、壁の外に向いている。  戻る駒津が遅いことに、誰も気付いていないようだった。  何食わぬ顔で駒津は灯りを手に道を進んでいく。  門真は後を静かにつけ続け――駒津がセムラ通りの兵舎に戻るところを見届けてから、静かに館への道をとった。  光を使って、駒津はシヅマの者と連絡を取り合っていた。  だが、その返事を待たずに駒津はさっさと自分の兵舎に戻っている。  伝えた内容は――恐らく、千織が上王陛下の手元に留められることはなかったという、作戦の失敗を告げる内容だろう。  それに対する答えは、どういった手段で駒津達の手元に届くのだろう。  将軍の武将の指月の進言により、地下通路は土石をもって塞がれている。そこを通じて情報は入ってくることはない。  同じように灯りを使えば、訓練された兵士たちはすぐに異変に気付くに違いない。そんな危険を父が冒すだろうか。    満月を過ぎて、下弦よりは少しふっくらとした月が、闇を突いて昇り始めている。  冴え冴えと輝く月を見つめ、門真は父が張り巡らした謀略について考える。  千織を上王陛下の寵童とする策は崩れ去った。  では。  今回のことを受け、父はどう動くのか。  このままで父が済ますはずがない。  読み切れない苦しさを覚えながら、月の照らしだした道を門真は一人歩き続けていた。  
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