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褒める言葉を呟いた後、ふつりと将軍が黙り込んだ。
かしこまって身を洗ってもらいながら、不意に訪れた静寂に何となく緊張が走る。
「俺が思う以上に」
沈黙を破って、将軍が再び口を開いた。
「千織は成長しているのだろうな。つい幼いままだと思ってしまっていたが……」
その言葉は、将軍自身の内側に問いかけているような響きを持っていた。
首を回して背後の将軍へ眼差しを向ける。
泡立つ布を手に、将軍が千織を見つめていた。
その黒い眼が細められている。
「伽螺様――?」
思わず名を呼んだ千織に、将軍の目がさらに細められた。
「千織は」
眼差しを動かさないままに、将軍が呟く。
「翠龍について、真実を知りたいか」
唐突に将軍の口から放たれた問いに、千織は身を強張らせた。
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