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「木守り」には、別の意味があるとも言われています。
たった一つ実を残すことで、食べに来る鳥たちに満足してもらうのです。もし、何も無ければ、鳥たちは怒って本体の木を傷つけてしまうかもしれません。ですが、一つでも残っていたら、それを食べることで満足すると言われています。
だから、残された実は、鳥たちに食べられることで、母体である木を守っているのですよ。
ぽつんと、木の頂にある木の実を見る。
あの実は――たった一つ残って、木を守っているのだ。
優しい声で告げられた言葉は、なぜか、しんと千織の胸を打った。
一人で木を守って――あの実は、かわいそうだね。
思わずつぶやいた言葉に、乳母は慈しみに満ちた眼差しで見つめてから
お坊ちゃまは、お優しいですね。
と言葉をかけてくれた。
領主の息子として、優しいよりは猛々しい方が良いと、千織は思っていた。
兄たちは、勇猛で知られる千織の父親に似て、精悍な体つきをしている。
千織はどちらかというと母親似で、華奢な体がいつも恥ずかしかった。
つい日頃の悔しさが弾け、優しくなんかないと乳母に八つ当たりのように言っていた。
千織の言葉を意に介さず、乳母は静かに髪を撫でてくれた。
優しいのと弱いのは同じではありませんよ、千織さま。
本当は、優しさは強さなのです。だから――そんなに恥じなくても良いのですよ。
私はお優しい千織さまが、大好きです。
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