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『俺が寝台で一緒に眠りたいと思ったのは、これまでの人生の中で、千織だけだ。
この先も、千織しかいないだろう。
俺を信じて、安心しているといい』
最後に、『伽螺』と名前を記して、将軍からの手紙は終わっていた。
不思議な衝撃が、身を襲った。
手紙を持つ手が、抑えがたく震える。
ずっと側に居てほしいと将軍は書いていた。
寝床で一緒に眠りたいと思ったのも、千織だけだと。
湧き上がってくる感情が整理できず、千織は幾度も将軍の手紙を読み返した。
俺を信じて、安心しているといい。
その一言を、指でなぞる。
力強い書体で綴られた将軍の名前と。
溢れる感情に耐えられず、千織はぎゅっと手紙を抱き締めていた。
伽螺様。
嬉しいです。
心の中に叫ぶと、目に熱いものが宿った。
昨夜、戻ってきてくれた将軍は、千織の手紙を読み、安心させようとして疲労の極みの中で想いをしたためてくれたのだ。
その優しさと思いやりの深さに、涙があふれた。
ぎゅっと抱き締めたために、少し皺が寄ってしまった手紙を、千織はもう一度読み直した。
涙越しに滲む文字を心に刻むと、前の書置きのように千織は丁寧に手紙を四つ折りにすると、胸元にしまった。
寝台から降りかけていた身体をもそもそと動かし、もう一度将軍の腕の中に、千織は身を戻した。
再び寝台に横たわると、近いところで将軍の寝顔を見つめる。
しばらく迷ってから、そろそろと将軍の手を取り、自分の指を絡めてみた。
握り込んでも、将軍は目覚めなかった。
そのことを確認してから、千織は将軍に身を寄せた。
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