待ち人来たる、少女

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待ち人来たる、少女

1.目撃  毎日、下校時に通りかかる駅のロータリーである少女を見かける。  彼女はいつも同じベンチに腰掛け、本を読むでもなく音楽を聴くでもなく、まるで誰かを待っているようにぼんやりと空を見上げていた。  彼女の制服は確か、隣の高校のものだったと思う。 (毎日毎日……誰を待ってるんだか)  初めて目にした時は特に気にならなかったものの、こう毎日視界に入ってしまうとどうしても徐々に興味がわいてきてしまう。  きっと他校の彼氏とでも待ち合わせか、家族の誰かと一緒に帰宅するためか。  理由はそのあたりだろうな、と思っていたのは初めの一週間だけだった。  僕が委員会や部活で帰りが遅くなった日でも、すっかり日が暮れた時間になってしまっても彼女は毎日変わらずそこに座っているのだ。  相変わらず何もしないで、空を見上げたり当たりをゆったりと見回すだけで。  そして今日もまた、彼女は定位置に座っていた。  まるで景色と同化しているように。 「でも、誰かを待ってはいるんだろうな……」  ただ時間を潰しているような素振りには見えない。  彼女はいつも、どこかわくわくした目で行き交う人達を眺めている。  まぁ、僕がそれを知る由はないんだけど。
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