ある統合失調症者の手記~湯治場にて~

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 静かだった。  お湯がさらさら流れる音。  男たちは洗面台で、無造作にタオルを使って体を洗っている。  広い浴槽に入った湯に浸かり、瞼を閉じるおじいさん……。  うっすらと湯気が漂っている。  僕はのろのろと洗面台に腰を下ろし、ひと通りボディーシャンプーで体を洗った。  隣に座っていたK氏は、僕にひとことふたこと言葉をかけると、浴場の湯けむりの中へ消えていった。  風呂桶と水が弾ける音がこだまする。    さらさらさらさらお湯が流れる音に包まれる。  ……静寂がゆっくり近づいてくる。  「終わった」  心の中で確認できた。  僕は湯船に体を浸した。
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