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おじさんがベッドから離れた。眠っていた。気が付いて目覚まし時計を見たら5時少し前だった。身体がだるいし、あそこにも鈍い痛みが残っている。しばらく横になっていることにした。私がしなければならないことはなにもない。
キッチンから音がする。おじさんが夕食の準備を始めたみたいだった。そういえばお腹が空いて来た。おじさんが玄関を出て行く音がした。どうしたんだろう?
しばらくして戻ってきて、ベッドのところまで来た。眠ったふりをしていると「夕食にチキンカレーをつくることにした。食べるか?」と聞かれたので、すぐにおじさんに顔を向けて頷いた。
おじさんはキッチン戻って行った。それから、カレーの匂いがし始めた。お腹が空いた。私は散らばっていた部屋着や下着を集めて身づくろいしてキッチンのテーブルについた。私はカレーの出来上がるのを黙って見ている。
おじさんが大きめの皿と中くらいの皿にご飯とカレーを盛り付けると「食べるぞ」と声をかけてテーブルの椅子に腰かけた。
「食べてみてくれ」というので、すぐに食べてみる。意外とおいしいので夢中になって食べる。
「おいしいか?」と聞かれたので頷く。おじさんは満足そうに笑った。
「このごろずっと弁当ばかりだったから、うまいな、うまくできた。レトルトカレーよりずっとうまい」
自画自賛している。すぐに二人とも食べ終えた。
「ごちそうさん。うまかったか?」
「おいしかった」
「それはよかった。たまには料理をつくるとするか」
おじさんの料理はまんざらでもない。これなら食べても良い。それから、私は立ち上がって食器を流しに運んで洗い始めた。
「洗ってくれるのか?」
「はい」
私が返事したので、顔をじっと見られた。おじさんは私が口を利かないのを気にしていたようだ。私に悪いことをしていると思っているのが分かった。私はもう気にしていない。なすがままになっているだけでここに置いてもらえるし、食事もできるし、服も買ってくれた。
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