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衝撃《インパクト》の瞬間
私より一回り年下の友人、咲也が頬を上気させながら子供向けアニメの説明をしている。
「その登場人物の必殺技はちょっと変わっていて、敵にダメージを与えないんだ。敵に恋心を起こさせて、身動き取れなくしちゃう、『ずっきゅん・パンチ』って言うんだけど」
仕事帰りに立ち寄った居酒屋で、話の流れのままに男同士、らしくもない話題だ。
「なるほど。そいつは意外と、効果ありそうだな」
服がだぶついた肩まわりを見ながら、感想を述べる。
華奢な彼は子供のころ、マッチョなヒーローには憧れを抱かなかったのだろう。
そうそう、と咲也は相槌を打った。
「こうやってね、相手の心臓めがけて……」
肘から先をくるくると回し始める。
「……ずっきゅん・パーンチ」
彼の放った一撃は、私の心臓に届くだろうか。
その瞬間を待った。
(了)
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