星無しと見なされた者

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ここはヴァロン帝国三大貴族の1つ【タンジェ家】の城である。 この日、タンジェ家現当主ノックスの妻、オリヴィエが出産を迎えていた。 「旦那様! 生まれました! しかし…… 」 使用人だろうか、メイド服を着ている女性は大きな扉を駆け足で開くと、大きな書斎に入室した。 そして、礼をしながら発せられた声には興奮と若干の疲労、語尾には悲壮感が入り混じっている。 『旦那様』と呼ばれた男は軽く返事をすると、急ぎ足で書斎から出ていき目的の場所へ一目散に駆けた。 「オリヴィエ! 無事か!? 」 大豪邸のとある一室に辿り着くと、扉を勢いよく開けてぐったりと横たわる妻、オリヴィエのところへ駆け寄り、力強く抱きかかえた。 しかし、抱きかかえられたオリヴィエは顔面蒼白で身体に力が入っていない。 「あなた……私たちの子が産まれたわ  一緒に成長を見たかったのだけど、それは出来ないみたい……ごめんなさい……」 オリヴィエが最後の力を振り絞るかのような、消え入る声でその男に告げた。 隣りにはメイドと、執事がそれぞれ赤子を抱えている。 2人は赤子をオリヴィエの左右に寝かせると、オリヴィエは愛おしそうに子供たちを見つめた。
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