星無しと見なされた者

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ノックスは一瞬だけ顔を強張らせたが、すぐに冷静に戻り我が子を抱きかかえ左耳の後ろを確認した。 そこには『ただのほくろ』のようなものがあるだけだった。 「このことをこの場にいる者以外で、知っている者はいないな?  絶対に口外してはならん。特に父上には何としても知られてはダメだ……」 オリヴィエが命と引き換えに残した宝物を、丁寧に抱きかかえてノックスはこの事態の行く先を考えていた。 『星無し』は数百年に1人いるかいないかである。 それも正式な記録があるわけではなく、風の言い伝え程度でしか確認されていない。 そのレアなケースが、歴史あるタンジェ家で起きてしまった。 ノックスの父はヴァロン帝国の中でも、実力至上主義で有名なのだ。 力無き者は存在価値がないとまで考えているような男だということは、息子であるノックスが一番良く理解していた。 「城内から防衛系統に長けた者を集めて、すぐに書斎まで来てくれ。  オリヴィエは俺が寝室まで運んでいく。  最優先で葬式の準備に取り掛かってくれ。関係者への連絡も頼む」 的確に指示を飛ばし、双子の男の子コウを執事に任せてオリヴィエを抱きかかえると2人の寝室へと向かった。
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