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そしてここは東厳郷の名門である十条家の当主が、代々使用する書斎である。
「えっと……レイ?
まずその爪を納めていただきたいんだけど」
「琉威、隠し子だなんて……いつの間に作ってたのかしら?」
そして、この状況である。
首に狐のような爪を突き付けられている男性。
黒髪のオールバックヘアーで、黒縁メガネに白衣を身に着けている。
見るからに研究者と言った装いだ。
老婆の息子で、翠の父親で名を琉威と言う。
そして右手の人差し指を首に突き付け、黒い笑みを浮かべている女性。
白に近い金髪を腰まで伸ばしていて、とても神秘的な印象を受ける。
この女性は翠の母親で名をレイと言う。
「こらこら、レイ。離してやりなさいな。
この子はわしがさっき森で拾ったんじゃよ。ほれ、手紙も入っておる」
レイは老婆に諭され、一旦爪を離して琉威から距離を置いた。
そのまま老婆が持っていた手紙を手に取り、目を通し始めた。
事情を理解したレイは赤子を抱き上げると、翠を近くに来るように呼び掛ける。
「この子は、今日から翠の弟になるの。しっかりお姉ちゃんできるかな?」
翠にも顔がよく見えるように体勢を変えると、目線を合わせて問いかける。
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