願い

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いつかはまた始まるものだと誰もが思っていた。 そもそもを言えばきりがないが、同一民族の隣国同士。 まったく違う文化であれば、 お互い高めあい、認め合うことも可能だったかもしれないが 口さえ開かなければ、見てくれも僕らとさして変わらない。 似たもの同士であるが故に、その僅かな違いが目に付く。 近親憎悪・・というのだろうか。 長い歴史の中では師であったことも、弟子であったことも 蜜月もあったことはあったが お互いがお互い、自分の方が正義であり、優れているという態度は どんなに取り繕くろうが、敏感に相手を不快にさせる。 決定的になったのはもう百年近く前の、世界中を巻き込んだ戦争だった。 ここぞとばかり両国は敵対した。 今まで机を並べて学んでいたリベラルな若者たちでさえ、この日から敵同士になった。 僕はその時の話を、亡き祖父からよく聞いていた。 祖父は良家のぼんぼんで、物静かな学者肌の人だった。 泣き虫で体の弱い僕の事を、殊の外可愛がってくれていた。
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