湖底に燈《とも》る仄《ほの》かな灯《あか》り

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ダムの底には足尾線の草木駅が,まるでいまでも電車を待っているかのように静かにその姿を残している。 ダムに沈む前の草木駅は渡良瀬川左岸沿いにあり,現在はダム建設によってできたダム湖に架けられている草木橋周辺になる。当時の草木駅は,神土駅(ごうどえき)〔1989年(平成元年)に神戸駅と改称〕と沢入駅(そおりえき)の中間にあり,地元住民にとっては通勤や通学の駅として利用されていた。 草木ダムの建設によって,草木駅周辺の線路をはじめ多くの建物がそのままの姿を残しダムの底で眠っているが,そこには多くの先祖の霊も一緒に眠っている。 毎年,お盆になると人知れずダムの底に(ほの)かな(あか)りが(とも)り,ほんの数時間だけ先祖の霊たちによってかつての(にぎ)わいをみせた。
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