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「伊澄さん」
僕は伊澄さんに呼びかけた。
「何かしら? 屑木くん」
伊澄瑠璃子は胸元で両腕を組んでいる。この場の状況を楽しんでいるかのようだ。
「君は、多くの人間の体に、君のお姉さんの一部を植え付けていたんだな」
「だいたいのことは、合っているわ」と伊澄さんは言った。
おそらくそうだ。
伊澄瑠璃子は、姉の一部を人間の体に植え付けていた。その目的は、それに人間の血を吸わせ、大きくするためだ。
確かに人間の血を吸った「あれ」は大きくなっていったようだ。
あの屋敷にいた学生の男女が言っていた。
「まだ完全ではない」と。
あれは、伊澄レミの体が、「元に戻っていない」そういう意味にとれる。
「だったら・・本体は、君のお姉さんの本体は、どこにいるんだ?」
伊澄レミの本体・・それはどこにいる?
「本体?」
伊澄瑠璃子は、僕の言葉に「本体って、イヤな言い方ね。屑木くんが言うのは、レミ姉さんのことだと思うけれど」
「言い方はともかく、君のお姉さんはどこにいるんだ?」
「屑木くんも何度か、出会っているはずよ」
「もしかして、あの屋敷で、白山あかね、そして、佐々木奈々の血を空中に出させた・・あの物体が君のお姉さんだったのか?」
伊澄瑠璃子は「ええ」と頷き、「ただし、レミ姉さんは、今はあの屋敷にはいないわ」と言った。
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