291人が本棚に入れています
本棚に追加
/1262ページ
あまりの神城の真剣な顔に動かされて、次の休み時間、前の席に座っている松村に声をかけた。
「なんだ・・屑木」
そう言って振り向いた松村の顔は、
神城の言う通り、
確かに穴が開いているように見えた。
言い方を変えれば、そこには人としての魂が存在しない、そんな風にも思えた。
気のせいか、とも思い目を凝らして見る。
パッと目にはただの虚ろな顔なのだが、気を抜いて見てしまうと、
そこにぽっかりと穴が開いているように見える。
ずっと見ていると、顔の中に吸い込まれていくような気さえしてくる。
僕は「いや、なんでもない」と慌てて言った。
顔に穴が開いている。つまり、空洞だ。そこに魂の存在がない。
少なくとも、僕と神城にはそう見えたが、他の生徒にはどうなんだろう。
例えば隣の席の奴とか、何も思わないのだろうか?
教師はどうだ?
教師は、授業中、生徒と顔を突き合せている。松村の顔が変だとは思わないのか。
最初のコメントを投稿しよう!