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伊澄瑠璃子
◆伊澄瑠璃子
その人が姿を現すと、校庭に散らばっていた生徒たちが一斉に集まり始める。
その人の名は伊澄瑠璃子。
この春、よその町から転校してきた女の子だ。
彼女が姿を現すと、生徒達の間から感嘆の溜息が漏れる。
みんな見惚れているのだ。男子は当然、女子の目も憧れの対象として眺めている。
伊澄瑠璃子はそんな様子など気にも留めず観覧の生徒達で熱くなった空気を切るように真っ直ぐに歩く。
長い髪が歩調に合わせて揺れ、その神秘的な姿を際立たせている。
その切れ長の瞳には誰の姿も映っていない。
同じ年頃の女子たちが、伊澄瑠璃子に憧れても、自分たちがその容姿を持つことはできない。
・・それは不可能だよ。
伊澄瑠璃子はそう言いながら自分の姿を人前にさらして歩いているように見えた。
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