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そう思った時、伊澄瑠璃子の切れ長の瞳が恐ろしいほどに吊り上った。
「あなたの妹が、男に指示したのね・・レミ姉さんを殺めるように」
そう伊澄瑠璃子は言った。
それが本当なら、いき過ぎた悪戯、いや、卑劣を極める犯罪だ。
自分たちの罪を隠蔽するためか、伊澄さんの姉に対する腹いせだったのか。どちらにせよ、サヤカが男に命令したということだ。サヤカは暴漢男とそういう仲だったのか?
「んぐぷっ、むふうっ」
伊澄瑠璃子の言葉に呼応するようにサヤカが、声を出したようだが、上手く発声できずに、ドロドロした液体を涎のように口から垂らした。液体は畳に落ち、沈み込む。
僕は伊澄瑠璃子に当たり前の問いをした。
「伊澄さん、この女の人は、その時、罪に問われなかったのか?」
伊澄さんは僕に向き直り、
「その時、この女はまだ未成年。屑木くんが思うほどの罰は与えられなかったわ。それに、そんな証拠もない」と言った。
「けど、その男が言うだろう。『女に命じられた』と証言するんじゃないのか?」
男が警察で、女に唆されたと言うはずだ。
「その男はね・・そんな知恵のある男ではなかったのよ」
伊澄さんはそう言った。
その犯罪を犯した男は、頭が弱く、卑劣なサヤカの言いなりだったということか。
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