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焼き荒らされた村。
剣で無残に斬り殺された、大切な人達。
突然の出来事に、悲しみを通り越して、涙も叫び声も俺からは出なかった。
周りは色が失ったように、空は真っ暗、目に映る木や家の残骸は灰色。
その中で横たわる亡骸だけが、鮮明に浮かぶ。
『戦うのならば、よく意味も分からない戦を繰り返す国の為ではなく、妹と村の人達の為に戦いたい』
あれは俺の”強く在る理由”ではなくて、”生きている理由”だったのだ。
そう悟った瞬間、俺の黒髪は真っ白になっていた。
全てを失い、自分の世界から色が消えたように、いつの間にか俺の髪は白髪に変化していた。
「どうだ?王国の騎士団に入って、妹達の仇を討ちたいとは思わんか?」
三日三晩、寝ずにリアナと村人達の墓を作り上げた俺に、国王からの使いだという騎士団長が言った。
他にやりたい事も、生きる理由もなかった俺は、黙ってその騎士団長の元に身を置く事にした。
この時は、まだ知らなかった。
その場所が俺の新たな”生きる理由”を見付ける場所になる事を……。
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