10人が本棚に入れています
本棚に追加
死神騎士(5)
……
…………。
永い眠りから覚めたような感覚。
ゆっくりと瞼を持ち上げると、真っ先に映ったのは眩しいばかりの光。
鼻に届いた良い香りに辺りを見渡すと、そこは見た事もない位に美しい花畑が広がっていた。
赤、白、黄……。様々な色で咲く美しい花。
その、何年か振りに色付いた景色を見た瞬間。俺の瞳からは止めどなく涙が溢れて零れ落ちた。
そして……。
「お兄ちゃん!」
背後から聴こえた懐かしい声に振り向けば、今まで被っていた”死神騎士”の仮面が外れていった。
「もうっ、相変わらずグズなんだから!
私、ずっとずっと天国で待ってたんだよ?」
以前と変わらない、頬を膨らまして拗ねる仕草とその言葉に、たくさんの想いが溢れて嗚咽が止まらない。
ーーもう一度、逢えた。
国王を暗殺し、全てを終えた俺には、もうあの世界で生きている理由がなくて……。自ら、その命を絶った。
最初のコメントを投稿しよう!