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次々と階段を駆け上がっていく。
「34・・・35・・・36」
階数を数える自分の声だけが響いた。
流石にミヤも息が上がった状態のためか、話しかけてこない。最も、俺の方が口数多いかもしれないが…。
「脱出方法・・・って、どんな・・・ものなの?」
「私用のはちゃんとしたモノだけど・・・あなたに貸す手段・・・は、あくまで“予備”だから・・・」
「予備?」
「屋上についたら見せる」
首を傾げた俺に対し、彼女は一言だけ述べたのである。
話しかけている内に、足音が更に大きくなる。
「急ごう!!」
俺は、無意識の内に彼女の腕を掴んで階段を駆け上がっていた。
「48・・・・・49・・・・・・50!・・・到着だ!」
走りながら登っていたので、二人ともその場に立ち止まって息があがっていた。
うつむいた状態から元の体勢に戻そうとしたとたん、ミヤの瞳を垣間見たのである。
漆黒の瞳と思いきや、目に光を感じられない。…何より、瞬き一つしていないように見えたから、もしかして…?
「これ」
考え事をしていた俺は、彼女の声と差し出された物を見て我に返る。
自分に対して渡されたのは、一枚の板みたいな形をしていた。
「これってもしや・・・」
「ええ。バランス感覚を間違えると、死に至るわよ」
シャレになんねぇー!!
さらっと凄い事を言う彼女に対し、俺は冷や汗をかいていた。
しかし、脱出手段を教えてもらえたのだから、文句を言う訳にはいかない。
あれ?俺が「これ」を使うとすると、彼女は何を使うのだろうか・・・?
同時に、そんな考えが俺の脳裏をよぎっていたのである。
「見つけたぞ!!!」
警備員達が俺達に追いついていたようだ。しかも、奴らも階段を使用していたにも関わらず、息一つあがっていない。
「くそ、あいつらしつこいな・・・!」
「駄目よ!!!」
警備員達を追い払おうと剣をかまえそうになった俺に、ミヤは声を張り上げる。
理由を尋ねる間もなく、彼女は俺の腕を掴んで走り出した。
俺達が走る方向にちょうど向かい風が吹き、全速力の手助けをしてくれている。気がつけばミヤは細長い棒のようなものを両手に持っている。俺達二人は、一切立ち止まらずに走り出す。
「出るわよ!!!」
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