第一章 亡失都市での調べ物

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「空を飛ぶ」――――――それは、子供の空想とか考えていた。・・・しかし今、俺達は、いくつものビルの上を飛んでいる。 ミヤは“パラグライダー”というモノを脱出手段として利用していた。バランスを取るのがあきらかに難しそうな代物のようだ。ただし、パラグライダーの色が白鳥のように純白な事に新鮮さを感じたのである。  一方、俺が借りた“脱出手段”は“エアスノーボード”。古代人が作ったとされるモノで、板のようなモノにつかまって使う一種の移動手段。走行中は宙に浮いて動くため今回使用したが、本来は低空飛行するモノであるため、このまま空中で走り続けられるかはわからない。幸い、逆風に煽られるという事態にはならなさそうなため、このまま飛行できそうだ。 「風がすげぇ気持ちいい・・・」 19年間生きてきた中でこんな体験は初めてだったので、この時はただ静かに風を感じていたのである。  どれぐらいの間飛んでいたかはわからないが、俺達二人はトウケウの入口付近に広がる鉄壁の上に着地していた。街はすっかり夕焼け色に染まっている。 「・・・間に合ったわね」 不意に呟いた彼女の言葉を聞いて、俺は「この街の仕組み」について思い出した。 高層ビルの下の方を見ると、黒っぽい物体が次第に増え始め、街の夕日色を消していく。 「あれが全部、魔物・・・いや、この街で亡くなった人々の魂なんて信じられないわ」 「本当だよな・・・」 そう話す二人の間に、短い沈黙が起こった。  この街、実は世界地図だと“亡失都市トウケウ”と書かれている。そのため、もう都市として機能していない街だったのだ。トウケウは元々、2000年くらい昔の古代人によって作られた都市で、度重なる戦争によって滅亡の道を辿る事となった。しかし、文献では「この街でマカボルンが作られていた」と書かれている。そのためなのか、1年に1度のある日、その24時間という限られた時間の間だけ、滅亡する前の姿に戻るのである。
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