第二章 ケステル共和国

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第二章 ケステル共和国

馬車が揺れる音が響く。土を踏み、街道を駆け抜けていく。亡失都市トウケウを脱出した俺とミヤは、ケステル共和国の首都ゼーリッシュ行きの馬車に乗っている。 あの都市の印象が強くて、こちらの世界が現実だということをすっかり忘れていた。  トウケウは古代都市ではあるが、今よりも技術がかなり進んでいたと思われる。一方、俺達が生きる現代は、世界的な規模ではないが未だに各地で戦争が起きている。世界は数十カ国の王達によって建国されたケステル共和国と、魔法大国ミスエファジーナ。そして俺が生まれた国レンフェンの3大勢力に別れ、他の小国を治めている。ミスエファジーナとレンフェンは不可侵条約を結び、歴史の背景等からある程度良好な関係を築いているが、ケステル共和国とは異なる。宗教上の思想などの違いで、大戦争にはならなくても睨み合いが続いている。  「そろそろ着くわよ」 ミヤの言葉を聞いて窓を見てみると、ゼーリッシュの入り口前に到着していた。 馬車を降り、関所にて身分証明書を見せる。  この国―――――いや、世界中のどの国でも適用されている「旅人制度」というものがある。これは旅人のための制度で、複数の国を歩き回る人に対し、旅人用の身分証明書が発行され、自由に入出国が可能となる。 しかし、出入りが自由になるこの制度には、デメリットもある。旅人はその国の民として戸籍登録がされていないため、滞在国での法に守られることがない。そのため、病気や怪我をした際も適切な対処をしてくれないのだ。また、1つの国に滞在できる期間も国によって決められているため、長期滞在する場合はその国で戸籍登録を行わなくてはいけない。もちろん、その国の国民が旅人になりたい場合も手続きが必要で、戸籍登録を解消しなくてはならない。面倒な手続きをさせることによって、その国の民を失わないようにする狙いで、そのような決まりになっているのだろう。  2人はゼーリッシュを歩き始めた。ミヤが手に入れた本を依頼人に持っていくという。歩いて行く内に、二人は路地裏の方へ入って行く。
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