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※
迂闊だった…
彼――――セキとの会話中、柄にもなく感情的になったからか。
『君だって人間じゃないか!!』
彼の言葉が、私の脳内をかけめぐる。
自分は人間ではあるが、ただの人間ではない。わかりきっている事なのに、その台詞を言われた時に何故か胸が痛んだのである。
…なぜこんな気持ちなんだろう…?
そんな想いが芽生えた私だったが、感傷に浸っている場合ではない。あれから妙な男達に拉致され、馬車で何処かに連れて行かれている。
「お前はうちで知らなくて良い事まで知りすぎた。…しかし、ただ始末するだけではつまらないから、面白い所に連れて行ってあげよう」
私の耳元で、依頼人が囁く。
腕を縛り、猿ぐつわをされて目隠しもされた状態なので、周囲は何も見えない真っ暗であった。最も、私は目が見えないので目隠しは無意味な行為だが、彼らは自分が盲目だという事を知らない。
刀も取り上げられてしまったため、抵抗する事もできないのが現状だ。ただおとなしくしているしかない状況に対し、屈辱的な気分を味わっていたのである。
そして、依頼人の手が目隠しを取り、私の頬に触れる。
「この白い肌と華奢な身体…。この漆黒の瞳は意外性を感じるが、さしずめ今後は鑑賞用か“ねこ”に使われるだろうね」
そう告げる依頼人の表情は、見えないがおそらくは不気味な笑みでも浮かべているだろう。
私はこの国のギルドに所属していたが、ある日この依頼人からの任務をこなした事で気に入られたのか、何度も私に依頼するようになっていた。
怪しい雰囲気は感じてはいたが、報酬(ギャラ)も良かったという理由から続けていた。しかし、彼らは裏で殺人・恐喝・買収・裏取り引き等、国の目を盗んでいろんな犯罪を犯していた事を知ってしまう。
こういう時、相手の表情が見えないのはつらい…
そう考えていると、突如馬車の動きが止まった。
「到着いたしました」
馬車の運転手らしき男の声が聞こえてくる。
すると、依頼人は私の口にハンカチのような感触を持つ布をかぶせる。おそらく、睡眠薬のような薬品が染み付いているものだろう。それに気付いた途端、徐々に意識が遠のいていくのであった。
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