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くそっ、どこに行ったんだ!?
どこに連れて行かれたかわからないため、あの時見た馬車を俺は探していた。
個人用の馬車を所有していたくらいだから、結構金持ちな奴のはず…
しかし、ずっと走り続けていると、次第に体力が消耗して疲れを感じ始める。動けなくなると後々困るため、誰もいない空き家の前に座って休憩をすることにした。
彼女も俺と同じ旅人だから、通報しても相手してくれないだろうし…どうすればいいんだ!!
頭を抱えていた時、側を走っていった人物が地面に何かを落としていった。
なんだろう?
不思議に思った俺は、それを拾う。少し古い紙のようで汚れてはいるが、旅人用の身分証明書だ。
「シフト・クレオ・アシュベル、16歳…」
俺は、無意識の内に名前を読み上げていた。
貼り付けられてる写真を見た時、どこかで見たことがあるような顔立ちをしている。
とりあえず、紛失するとよくないモノなので、追いかけて渡すことにした。
写真に写っている少年を追って、俺は空き家の階段を降りて行く。上は誰もいなそうなのに、こんな場所に何の用があったのか。降りていった先には扉があり、その前で銀髪の少年が別の人間と話し込んでいるようだった。おそらく、銀髪した後ろ姿の人物が身分証明書の持ち主だろう。
「これ、君のだよな?」
俺は、銀髪の少年の肩を指でつついた後、拾った旅人用の身分証明書を見せる。
「…どうしてあんたが!?」
「君がここに来る時、俺の目の前で落としていったんだよ。…大事なモノだろ?」
「ありがとう!これがないと入れなかったんだ!」
身分証明書を受け取り、少年は側にある四角い穴に突っ込んだ。
「…通っていいぞ」
図太い声が穴の中から聞こえてくる。
「本当にありがとう!入れなかったら今日の仕事もできなかったし…そうだ!この仕事が22時くらいに終わるから、そしたらルイス通りの“フェニックス”って店に来てくれないか?お礼がしたいから!」
満面の笑みを浮かべた少年は、俺にそう告げると中に入っていったのである。
…台風みたいな奴だったな
1分に満たない展開に対し、俺は茫然としていた。
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