第二章 ケステル共和国

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 ※ くそっ、どこに行ったんだ!? どこに連れて行かれたかわからないため、あの時見た馬車を俺は探していた。 個人用の馬車を所有していたくらいだから、結構金持ちな奴のはず… しかし、ずっと走り続けていると、次第に体力が消耗して疲れを感じ始める。動けなくなると後々困るため、誰もいない空き家の前に座って休憩をすることにした。 彼女も俺と同じ旅人だから、通報しても相手してくれないだろうし…どうすればいいんだ!! 頭を抱えていた時、側を走っていった人物が地面に何かを落としていった。 なんだろう? 不思議に思った俺は、それを拾う。少し古い紙のようで汚れてはいるが、旅人用の身分証明書だ。 「シフト・クレオ・アシュベル、16歳…」 俺は、無意識の内に名前を読み上げていた。 貼り付けられてる写真を見た時、どこかで見たことがあるような顔立ちをしている。 とりあえず、紛失するとよくないモノなので、追いかけて渡すことにした。 写真に写っている少年を追って、俺は空き家の階段を降りて行く。上は誰もいなそうなのに、こんな場所に何の用があったのか。降りていった先には扉があり、その前で銀髪の少年が別の人間と話し込んでいるようだった。おそらく、銀髪した後ろ姿の人物が身分証明書の持ち主だろう。 「これ、君のだよな?」 俺は、銀髪の少年の肩を指でつついた後、拾った旅人用の身分証明書を見せる。 「…どうしてあんたが!?」 「君がここに来る時、俺の目の前で落としていったんだよ。…大事なモノだろ?」 「ありがとう!これがないと入れなかったんだ!」 身分証明書を受け取り、少年は側にある四角い穴に突っ込んだ。 「…通っていいぞ」 図太い声が穴の中から聞こえてくる。 「本当にありがとう!入れなかったら今日の仕事もできなかったし…そうだ!この仕事が22時くらいに終わるから、そしたらルイス通りの“フェニックス”って店に来てくれないか?お礼がしたいから!」 満面の笑みを浮かべた少年は、俺にそう告げると中に入っていったのである。 …台風みたいな奴だったな 1分に満たない展開に対し、俺は茫然としていた。
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