第二章 ケステル共和国

9/17
前へ
/392ページ
次へ
 オークションの仕組みとしては、最初は物から始まり、その後に人の売り買いが始まる。俺自身は歴史とかに詳しくないので、「古き時代に作られた骨董品です!!」とか聞いてもほとんど興味が持てなかった。そして、進行は後半の人部門に入る。 「…っ…!!?」 その時、後ろからものすごい殺気を感じた。 恐る恐る振り向いてみても誰もいなかったため、気のせいだと思う事にしたのである。 人身売買は子供から始まり、次に大人の男。若い女性という順番らしい。バイトへの指示として「人部門に入った時は客の競り落としが激しいので、あまり客の前に出過ぎない」と、言われていた。そのため、後ろの方から会場を眺めていたのである。  ※  目を覚ました私は、まだ意識が朦朧としていたのか頭に霧がかかったような感覚がしていた。しばらくして意識がはっきりしてきた時、腕は縛られたままだったが、目隠しと猿ぐつわは外されていた事に気が付く。 ここは一体どこだろう…? 周囲を見渡して場所を探ろうと思ったが、後ろに寄りかかった時、鉄格子を触ったような感覚がした。そのため、牢屋か何かの中かもしれないという仮説を立てる。  この状態や先ほど依頼人が言っていた言葉から考えると、闇オークションか何かに出品されるのだろう。この国での人身売買は法律で禁止されているが、まだ裏社会では行われているという話を聞いたことがある。 普通の人間の年齢なら私は18歳に当るが、実際はもっと長く生きている。そんな中でこんな経験をするなんて思ってもみなかったな… そう考えてるや否や、数人の男らしき足音が耳に入ってくる。すると、丸ごと持ち上げられて、どこかに乗せられたかんじがした。 …成程。私は牢屋ではなく、小さな檻に入れられているんだ… 持ち上げられたかと思うと、檻は動き出す。檻が揺れる音と一緒に滑車のこすれる音が響いてくる。 いよいよか… 大きなため息をついていると、ふと私が普段使っている刀の“気”を一瞬感じとる。私は、目が見えない代わりに人や物の気を感じ取ることができる。あの刀も、どこにでもあるモノではないちゃんとした名工に作られた刀なので、独特の気を放っているのだ。 …しかし、あれは拉致されたときに取り上げられてしまったから、ここにはないはずだが… そんな考えが頭の中を巡っているが、自分を乗せた滑車は舞台であろう場所へと運ばれていくのであった。
/392ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加