第二章 ケステル共和国

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闇オークションも終盤に近づいてきた。落札された後に沈んだ顔をして売られていく人達を見ていて、複雑な気分になる。 他のバイト達が噂していた最後の「モノ」の順番になろうとした時、俺に対して客の一人が声を掛けてくる。 「飲み物を戴けないかね?」 「あ、はい!」 飲み物を渡すと、何も言わずに席へ戻っていく。 その男は黒い帽子をかぶり、髪が腰近くまで伸びていた。  …どれだけ髪が長いんだよ 男なのにかなり髪が長かったので一瞬そう思ったが、 声をかけてきた男が金持ちなのはすぐに気がついた。全体が純金で所々に宝石がはまり、一番大きいサファイアの中に紋章が刻まれている――――そんな腕輪をしていたからだ。  でも、あの腕輪…どこかで…? 『それでは、最後の商品をご紹介します!民族としては、魔法大国ミスエファジーナ原始の民・バルデン族の少女!!』 腕を組んで考え込んでいたが、司会の言葉を聞いた途端に俺の心臓が強く脈打つ。 ミヤもあの漆黒の瞳を除くと、白い肌と赤みがかった茶色い髪――――――バルデン族の特徴を持っているからだ。 『歳は18と若く、鑑賞用でも中身を売り飛ばすも、なんでも有りです!…それでは、ご覧戴きましょう!!』 司会者による紹介の直後、近くに運ばれた鳥籠の形をした檻のベールが取られようとしていたのである。 不気味な仮面を被ったステージガールがベールとなっている布を外すと、人間一人入れそうな檻が出現する。そこに入れられていたのは、青いドレスを着て腕を縛られていた女性―――――ミヤだった。 一瞬目を見張ったが、あの周りを見えているようで見えてない漆黒の瞳は、間違えなく彼女である事を物語っていた。 「ミ……!!!!」 彼女の名前を叫ぼうとした途端、俺は背後から口を塞がれた。 『それでは、4000ナノから始めましょう!』 司会者の合図の後、競り合いが始まった。
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