69人が本棚に入れています
本棚に追加
「それに、お姉さんもひどい目に遭って疲れているだろうし…どんどん食べてね♪」
相変わらず表情は読み取れないが、身長から見るにまだ15~16歳くらいの少年だろう。ナイフを持った相手を一発でねじ伏せた所を見ると、格闘家のようだ。
しかし、亡失都市トウケウを脱出して以来何も食べていなかったので、私は無我夢中で食べ始めた。
「お姉さん、よく食うね…」
「ミヤ、君ってもしかしてやせの大食い?」
二人の視線を感じた。
大食いといえば、そうかも…
一般的な女性と比べると食べる方だったので、私はその場でうなずいた。
「では、改めて自己紹介を。僕はシフト・クレオ・アシュベル、16歳です。このたびは、…えっと…」
「セキ・ハズミ」
「ミヤといいます」
「セキさんには仕事前のお世話になり、ミヤさんには被害者だけどこちらの仕事にご協力して戴き、本当にありがとうございました。僕個人と、そしてギルド・“アズ”を代表して、二人にお礼申し上げます」
「セキでいいよ」
「私も、呼び捨てで大丈夫です」
「じゃあ、セキにミヤ!!」
シフトは、私達を見つめてから口を開く。
「2人は恋人同士なの?」
「ゲホッ!!!」
その拍子に、私は食べ物を喉につまらせる。
一方でセキが―――――――――
「いやいやいや、まだ知り合って間もないから!」
私も、何を言い出すのかと思ったくらいだ。
「でもね、セキはミヤを助けるのに必死だったよ?後先考えずに、「ミヤ~!」って叫びながらつっこんでいきそうな勢いしていたし!」
私の耳元でシフトが囁く。
そうだったんだ…
何故か胸が暖かくなったような、不思議な気分だった。
「そういえば、身分証明書を見るからに、シフトは旅人だよな?この国での滞在可能期間って最大何日間だっけ?」
「あー…」
「最大で7日間だぜ。」
黙り始めたシフトに対し、最初にセキが声をかけた店長らしき人物がやって来た。
「おい、シフト!少しの間、片付け作業代われ」
「…うん、わかった!」
頼みに応じたシフトが、厨房の方へ歩いていった。
最初のコメントを投稿しよう!