第二章 ケステル共和国

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「それに、お姉さんもひどい目に遭って疲れているだろうし…どんどん食べてね♪」  相変わらず表情は読み取れないが、身長から見るにまだ15~16歳くらいの少年だろう。ナイフを持った相手を一発でねじ伏せた所を見ると、格闘家のようだ。 しかし、亡失都市トウケウを脱出して以来何も食べていなかったので、私は無我夢中で食べ始めた。 「お姉さん、よく食うね…」 「ミヤ、君ってもしかしてやせの大食い?」 二人の視線を感じた。 大食いといえば、そうかも… 一般的な女性と比べると食べる方だったので、私はその場でうなずいた。 「では、改めて自己紹介を。僕はシフト・クレオ・アシュベル、16歳です。このたびは、…えっと…」 「セキ・ハズミ」 「ミヤといいます」 「セキさんには仕事前のお世話になり、ミヤさんには被害者だけどこちらの仕事にご協力して戴き、本当にありがとうございました。僕個人と、そしてギルド・“アズ”を代表して、二人にお礼申し上げます」 「セキでいいよ」 「私も、呼び捨てで大丈夫です」 「じゃあ、セキにミヤ!!」 シフトは、私達を見つめてから口を開く。 「2人は恋人同士なの?」 「ゲホッ!!!」  その拍子に、私は食べ物を喉につまらせる。 一方でセキが――――――――― 「いやいやいや、まだ知り合って間もないから!」 私も、何を言い出すのかと思ったくらいだ。 「でもね、セキはミヤを助けるのに必死だったよ?後先考えずに、「ミヤ~!」って叫びながらつっこんでいきそうな勢いしていたし!」 私の耳元でシフトが囁く。 そうだったんだ… 何故か胸が暖かくなったような、不思議な気分だった。 「そういえば、身分証明書を見るからに、シフトは旅人だよな?この国での滞在可能期間って最大何日間だっけ?」 「あー…」 「最大で7日間だぜ。」 黙り始めたシフトに対し、最初にセキが声をかけた店長らしき人物がやって来た。 「おい、シフト!少しの間、片付け作業代われ」 「…うん、わかった!」 頼みに応じたシフトが、厨房の方へ歩いていった。
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