第二章 ケステル共和国

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「あいつの友達…ねぇ。バルデン族の嬢ちゃんと、コ族の坊ちゃんが」 「あなたは…?」 「ああ、失礼。仕事柄、人間観察をついしちまうもので。俺はアロンド・ヴァン・ココリエ。2足のわらじで生活している、シフトの育ての親みたいなものだ」 「実の親子ではないって事ですか?」 気になった私は、アロンドさんに問う。 「まぁ…な。あいつはちょっと訳ありで、路頭に迷っていた所を俺が見つけてギルドとこのカフェにて住み込みで働かせているんだ」  わけあり…か シフトを初めて見たとき、何か人間とは思えないような“気”を感じた。彼自身は普通の少年に見えるが、何かあるのかもしれない。 「…もしかして、彼は滞在可能期間を超えて滞在しているんですか?」 不思議に思っていたセキが、アロンドさんに問う。 私もそれが自然なのではと思えてきた。 「…ここだけの話なんだが…。知り合いで政府の国民管理部に勤めている奴がいるんだ。そいつに頼んで、実際は旅人のままで戸籍登録をした“フリ”をしている。…他言無用だからな」 「わかってます」 私とセキは、そろってうなずいた。 「片付け、終わったよ!」 片付けをしていたシフトが厨房から戻ってくる。 その夜は4人で語ることで、朝まで過ごした。シフトは旅人だけどケステル共和国を出たことがないらしいので、旅の話で盛り上がる。アロンドさんと私は、楽しそうに話すシフトとセキの話を聴いていた。 まだ互いが知り合って間もないのに、こんなに打ち解けて話せたのは何年ぶりだろう…セキの存在が皆を安心させているのかな? 話を聞きながら、私はそんな事を考えていた。 朝方、話し疲れたセキとシフトはうつ伏せになって眠っていた。眠れなかった私は、厨房に戻ったアロンドさんの元へ向かう。 「やぁ、嬢ちゃん。起きていたのか」 「はい…」 その場でうなずく。アロンドさんは手を動かしながら私に話しかけてきた。 「・・会って間もないのに、あいつがこんなにも打ち解けられたのは…坊ちゃんや嬢ちゃんのおかげかねぇ…」 その台詞(ことば)に対し、特に私は何も返さなかった。
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