第二章 ケステル共和国

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「はは、嬢ちゃんはおとなしい奴だね。実は、さっきまで考えていたんだが…。あいつ…シフトを、あんたらとの旅に連れて行ってやってくれないかな?」 「え…?」 「…こんな事を頼むのは、かなりずうずうしいのはわかっている。ただ、記憶喪失を治すには世界を旅して、いろんなモノに触れることが大事だと思うんだ」 アロンドさんの台詞(ことば)を受け止めつつ、私は言葉を紡ぐ。 「…彼がいなくなってしまい、それでいいのですか?…血はつながっていないとはいえ、貴方の息子でしょう?」 私も父しかいない身なので、何故自ら離れるような真似をしようとするのかが気になった。 「いいんだ、俺は。もう歳だからカフェとギルド経営という2足のわらじで生活していくのはきつくなってきた。…どちらか1つを残すとしたら、俺の…死んだ妻が遺したこの店を残すのが一番良いと考えるようになった」 旅人が旅する理由がいろいろあるように、親がどのように子供の事を考えているかも人それぞれなのだ。 私の父は、私のことをどのように考えてるのかな… 私はその場で考え込んだ後に、口を開く。 「セキにも話してみます」 ※  目を覚ますと、すっかり朝になっていた。昨夜は4人でずっと語りながら過ごした。最も、しゃべっているのはほとんど俺とシフトで、ミヤとアロンドさんは俺たちの話を聴いているかんじだったが――――――――――― 「あれ?父さ~ん??」 自分と同じように目が覚めたシフトは、そう言いながら厨房の方へと歩いていった。 「おはよう、セキ」 「ああ、おはよう」 自分の目の前にはミヤがいた。 「よく眠れた?」 「ああ。でも、うつ伏せで寝ていたから、首筋が痛いや」 俺の台詞(ことば)を聞いたミヤは笑い、その後、真面目そうな表情になって言った。 「突然こんな相談をするのもあれなんだけど…シフトを私達と一緒に連れて行くことってできないかな?」 「俺はいいけど…どうして?」 俺は、一瞬だけ間をおいてから問いかける。
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