第二章 ケステル共和国

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自分としては、一緒に旅する仲間が増えるのはとても喜ばしい。しかし、シフトにはアロンドさんがいるので、何故それを言い出したか気になったのである。それに対して彼女は、アロンドさんと2人で話していた内容を語ってくれた。 「俺が寝ている間にそんなことがあったんだ…」 「なんでこんな気持ちになったのかわからないんだけど、なんか…シフトの記憶が戻って本当の両親や家族の事を思い出せれば、彼も不安な気持ちにはならないかなって思ったの」 ミヤは、少したどたどしい口調で俺に言う。 出会った頃のミヤは、自分の気持ちや感情を表に出そうとしなかった。 そんな彼女が、俺やシフトに対して感情を表に出していることに不思議な心地はしたが、ミヤも女の子だなと思うと少し安心した。 「ミヤ!セキ!」 シフトが厨房から戻ってくる。 「格闘技の師匠でもある父さんが、修行の一環として君たちと一緒に旅をしろ…って言ってきた」 アロンドさんがシフトをどのように行かせると思ったが――――確かに、それが自然な理由かもしれない。 「やっぱり、アロンドさんが格闘技の師匠だったのね」 「やっぱり…?」 「彼は数年前、ギルド所属者の間で有名な凄腕の格闘家だったのよ」 全然知らなかった… ミヤの台詞(ことば)を聞いて、俺は完全に呆気にとられていたのであった。  俺たちが外に出たとき、ゼーリッシュにある多くの店がオープンし始めていた。その中でアロンドさんがセキに言う。 「…身体に気をつけろよ」 「うん!…いってきます、父さん!」 そう言ったシフトは俺たちの元にやってくる。 俺とミヤはアロンドさんにお辞儀をして、ゼーリッシュの街を歩き出した。 シフトは「旅に出ろ」と、言われてどんなことを考えているのだろう… 「そういえば、”マカボルン”の手がかり、次はどこに探しに行くの?」 俺が考え事をしていると、シフトは変わらず無邪気な表情で俺に問いかけてきた。 「じゃあ、歩きながら話すよ」 3人で話しながらゼーリッシュの街を後にする。 仲間が増えたことで、旅の楽しみが増えたのがすごく嬉しかった。しかし今後、かつて経験した事のない出来事に遭遇する事になろうとは、この時は微塵も思っていなかった。
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