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中に入ってみると、相変わらず大量にある本棚と、一台の机があった。その上には薄いケースみたいなモノが置かれている。
「この中に入っている輪っかみたいな奴、なんだろうね?」
「これはもしや…“DVD-ROM”?」
ミヤが“それ”に触りながら言う。
「ミヤ、”DVD-ROM”って何なんだ??」
初めて聞いたその名前を俺は不思議に感じた。
「確か、映像や写真をこの中に保存し、特定の機械で再生できる物のはずよ」
辺りを見てみると、多くの文献に紛れて本棚の狭い箇所にこの“DVD-ROM”のケースがたくさんあった。
「それがおそらく、”お主らが本当に探しているもの”じゃよ」
振り向くと、そこには図書館の1階フロアで会った老人がいた。
「じ、じいさん!あんた、いつからそこにいたんだ?!」
いきなりの登場に、俺とシフトは目を丸くして驚いた。
驚いている俺達に目もくれず、その老人は話を続ける。
「じゃが、残念ながらこの図書館内でそれの中身を見ることはできん…。500年くらい昔には再生できる機械があったのじゃが…今はもう故障して使えないからのう…」
そうなんだ…。って、あれ?まてよ…?
そう考える俺の側で、ミヤが恐る恐る老人に尋ねる。
「もしかして貴方…死人…ですか?」
ミヤの台詞に対し、その老人は少し間を空けた後に言う。
「…そういうことらしいのぅ」
「らしい??」
シフトが何か不思議なモノを見たような表情で言った。
「わしが生きていた頃、旅の途中にこの図書館に迷い込んだのじゃ…。その時、宿代わりにここで夜を明かしたのじゃが…。翌朝、館内がひどく汚れていた事に気付き、わしは館内を掃除するようになったのじゃ…」
「それじゃあ、もしかして…」
「死ぬ前後の事はあまり覚えてないのじゃが…生前、わしは不治の病にかかっていた。胸が相当苦しかったある日、わしの頭の中に『声』が響いてきたのじゃ…。『きれいにしてくれてありがとう。お礼に、ずっとここで過ごせるようにしてあげる…』というな…」
死人とは、死んだその人間の中でも特に強い意思を持った者だけが生前と同じ姿で具現化し、成仏するまで永遠に動く魂の事だが―――――本物を初めて見た。彼らは魂だけの存在だが、ある意味“不死”の存在とも言える。
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