第一章 亡失都市での調べ物

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マカボルンはおそらく「古代史」と言われる歴史の分類にあるだろうと考え、その分類がある本棚へ向かうことにした。歩いていると、ヒールのある靴を履いているような足音が響いてくる。歩く俺の視線に入ってきたのは、早歩きでこちらに向かってきた一人の女性。 すれ違った瞬間、俺の視界に飛び込んできたものを目の当たりにして、驚く。その茶髪の女性が持っていた2冊の本の内、一つに“マカボルン”と書かれていたからだ。しかも、刀を腰に携えていたところから、自分と同じ旅人であるという事も悟る。 「持っている剣に目がいってしまうのは、剣士の性かな」と、思うや否や、彼女の後ろから同じ服を着た「警備員」という男が数名、自分とは逆の方角に向けて走り出していた。  あっという間の出来事に呆然としていたが、セキはすぐに我に返る。 「このままじゃ持ち逃げされちゃうじゃねぇかよっ!」 思わず自分にツッコミを入れてしまい、すぐさま彼らを追いかけ始めた。 両名とも図書館の地下口から地上に出て、街の中央の方角へ走っている。彼女はおそらく、自分と同じく館内の本を持ち出したから追いかけられているのだろう。捕まる訳にはいかないだろうからすぐに街の出口へ向かうのかと思っていたら、警備員は出口とは真逆の方向に向かって走っていく。 「どこに向かうのか」と考えながら、見失った彼女を探して辺りを見回した。自分の周りには「スーツ」と呼ばれる黒い服を着た男女がたくさん行き来していた。すると、茶髪で全身が黒の女性が高層ビルの正面入り口から中に入っていくのを発見する。先程見かけた刀も下げていた。 すぐさま彼女を追いかけようと思ったが、見るからに警備が厳重僧なため、流石に正面突破は難しいだろう。そのため、裏口から回ることにしたのである。 あの警備員に捕まったら、どんな目に遭わされるかわからないし… そんな思いを胸に抱えながら、セキは裏口へ向かう。  
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