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やっと見つけた・・・!
息を切らしながら安堵する。
「!!」
しかしその直後、喉元に何かが突き立てられている事に気がついた。
ほんの瞬き一回の内に女性は瞳を閉じたまま、自分に対して刀を向けてきたのだ。
「警備員じゃない・・・よ?」
誤解を解くつもりでそう口にしたが、あまりに突然の出来事で声が上ずっていた。
抜刀の瞬間…速すぎて全然見えなかった…!!
この時セキは、相手が凄腕の剣士である事を直感したのである。
彼女は2秒程考えた後、視線をこちらに向けないまま口を開く。
「・・・エレベーターのドアを閉めて」
その台詞(ことば)で、俺は我に返る。
どうやらエレベーターはドアが開いた後、すぐには閉まらないらしい。もし、この場に先程の警備員がいたら確実に捕まっていたであろう。
危なかった…
セキは内心で安堵していたのである。
「なぜ、エレベーター内に隠れていたの?」
「ボタンを押さないでそのまま止まっていれば、奴らに“停まっている階に降りて逃げた“と思わせられるから」
少女は、そう瞬時に答えた。
「あなたも旅人みたいだけど・・・調べ物?」
「うん、ちょっとね」
彼女の問いかけは聞かれるだろうと予測済みだったので、とりあえずは少し曖昧な返事を返す。
「君も調べ物?」
「ええ。でも、ギルドの仕事だから、これ以上の詮索はしないでね」
彼女は顔色一つ変えもせずに述べる。
ギルドの依頼をこなしているって事…か
セキは、相手の目的を理解する。
ギルドとは一般人や政府の要人などからお金をもらい、魔物退治・捜索・労働など、いろんな仕事を請け負う、いわばなんでも屋。ギルド所属者の掟として「仕事内容を第三者に話してはいけない」というものがある。それは、ギルドでは大きな声では言えない重要任務や非合法な任務も請け負うからだそうだ。俺はギルドに所属してないから詳しくは知らないが、とりあえずこれ以上の詮索はしない事にした。
ここまで登ってくるのに結構体力使ったから、一休みもしたいし・・・
深呼吸をしながらそんな思いがよぎったセキは、再び口を開く。
「俺は、セキ・ハズミ。君は・・・?」
「・・・私はミヤ」
「ミヤかぁ・・・いい名前だね」
姓を名乗らない事に対して違和感を覚えたが、とりあえずセキは会話を続けてみた。
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