第一章 亡失都市での調べ物

5/9
69人が本棚に入れています
本棚に追加
/392ページ
「そんなことより、あなたはちゃんとした脱出手段あるの?」 「え!?」 しかし、思わぬ台詞に対し、セキは驚きのあまり言葉を失う。 脱出手段のことなんて、考えてもいなかった・・・ 「・・・もしかして、ないの?」 「いやぁ・・・まぁ、そんなかんじ・・・」 焦っているのを悟られたのか、少し不平そうな声がミヤから聞こえてくる。 そこで俺は、自分の計画性のなさがわかった瞬間だった。 不機嫌そうな顔をしたミヤは、更に話を続ける。 「脱出手段を用意しないで、よくここまで来れたわね。“今は”街の状態も普通だけど、時間になったら・・・」 あきれ果てたような口調で、彼女はその先を述べようとした。しかし――――― 何かと衝突したような音と揺れを感じた。 「しまった…!!」 何が起きたのかさっぱりわからない自分に対し、ミヤは気付いたようだ。 「一体、何が起きたんだ??」 「エレベーターが自動から手動に切り替えられたわ」 「手動?・・・ということは・・・」 「…エレベーターに隠れているのがばれたってことね」 「ゲッ!!」 思わず俺は、だみ声を口に出してしう。 しかし、今は“女の子の目の前で下品な言い方は良くない”とか悠長に考えてる暇はなかったのである。 「やばいよ、どうすればいいんだ!?」 「私をおんぶして」 「……はい」 独り慌てている俺に対し、ミヤは冷静に対処していた。 そのため、一瞬で黙らせられたのである。 「天井のハッチを開けて脱出するわよ」 彼女の台詞(ことば)を聞いた俺は、すぐ様おんぶした。 「俺が開けようか?」 「大丈夫」 きっぱりと答えた彼女は、年頃の女性では開けられなさそうな天井のハッチを、一発で開けたのである。    ミヤがハッチから抜け出した後、俺もすぐに抜け出した。エレベーターの外は暗く、下の方では機械の音が響いていた。でも、底が全く見えないのには身震いがした。このビルに入った時、一見した所で50階くらいはありそうだったし、自分が乗った階も20階辺りだったので、高さがあるのは当然のことだ。 「この先どうするの?」 「今停まっている所のすぐ上のドアを手で開ける」 俺の問いに対し、彼女はそのように答えを告げる。 彼女の判断力の速さに驚いている自分がいた。さすが、ギルドに所属しているだけのことはある。
/392ページ

最初のコメントを投稿しよう!