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「そんなことより、あなたはちゃんとした脱出手段あるの?」
「え!?」
しかし、思わぬ台詞に対し、セキは驚きのあまり言葉を失う。
脱出手段のことなんて、考えてもいなかった・・・
「・・・もしかして、ないの?」
「いやぁ・・・まぁ、そんなかんじ・・・」
焦っているのを悟られたのか、少し不平そうな声がミヤから聞こえてくる。
そこで俺は、自分の計画性のなさがわかった瞬間だった。
不機嫌そうな顔をしたミヤは、更に話を続ける。
「脱出手段を用意しないで、よくここまで来れたわね。“今は”街の状態も普通だけど、時間になったら・・・」
あきれ果てたような口調で、彼女はその先を述べようとした。しかし―――――
何かと衝突したような音と揺れを感じた。
「しまった…!!」
何が起きたのかさっぱりわからない自分に対し、ミヤは気付いたようだ。
「一体、何が起きたんだ??」
「エレベーターが自動から手動に切り替えられたわ」
「手動?・・・ということは・・・」
「…エレベーターに隠れているのがばれたってことね」
「ゲッ!!」
思わず俺は、だみ声を口に出してしう。
しかし、今は“女の子の目の前で下品な言い方は良くない”とか悠長に考えてる暇はなかったのである。
「やばいよ、どうすればいいんだ!?」
「私をおんぶして」
「……はい」
独り慌てている俺に対し、ミヤは冷静に対処していた。
そのため、一瞬で黙らせられたのである。
「天井のハッチを開けて脱出するわよ」
彼女の台詞を聞いた俺は、すぐ様おんぶした。
「俺が開けようか?」
「大丈夫」
きっぱりと答えた彼女は、年頃の女性では開けられなさそうな天井のハッチを、一発で開けたのである。
ミヤがハッチから抜け出した後、俺もすぐに抜け出した。エレベーターの外は暗く、下の方では機械の音が響いていた。でも、底が全く見えないのには身震いがした。このビルに入った時、一見した所で50階くらいはありそうだったし、自分が乗った階も20階辺りだったので、高さがあるのは当然のことだ。
「この先どうするの?」
「今停まっている所のすぐ上のドアを手で開ける」
俺の問いに対し、彼女はそのように答えを告げる。
彼女の判断力の速さに驚いている自分がいた。さすが、ギルドに所属しているだけのことはある。
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