赤手児

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「会っても死ぬことはないが、美しいからと言って何度も会おうとするなよ。あの女に会いに行って、毎回高熱をだしていれば最悪のケースもあり得るからな。悪いことは言わない、女のことを忘れて、もうあの道は通るな。」 医者にはそう言われたが、私にはあの美しい少女を忘れることなんて出来ない。きっとこの感情は恋なんて生易しいものではない、言葉にすらできないほどの胸の高鳴りはどうしても抑えることができなかった。これが一目惚れというものなのだろう。 「わかってます。こんな苦しい思い、そんな頻繁にしたくはないですから。」 こうでも言わなきゃこの医者は引き下がらないと思い口先だけでそう言った。納得していない表情を見せていたが、もう話す気はないらしい。 「とりあえず解熱剤をだしておくから、今日は点滴を打ってから帰るように。じゃあ、お大事に。」  私は点滴をうっている最中も少女のことを考えていた。熱が収まったら。次は居酒屋には行かずに、酒を買って神社で晩酌をすることにしよう。微睡む意識の中で、看護師たちの話す声が聞こえてきた。 「あの点滴を受けてる患者さん、昨日魅入られちゃったんだって。」 「魅入られたって、もしかしてあの神社にでる妖怪のこと?」 「そうそう、たしか―。」 『赤手児』
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