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「……落ち着きました?」
職員専用室に男を入れてから十数分。そろそろ昼飯を食いたいんだが。と思いながらも丁寧に接する。見る限り若そうで、少なくとも玲司よりは年下だろう、と思った。
男はゆっくりと顔を上げ、「はい」と言った。涙に気を取られて凝視していなかったが、この男はかなり顔が整っている。
玲司は、思わず息を飲んだ。
「すみません、わざわざ。ちょっと……現実味がなくて、混乱してしまって」
「……そうですよね」
できれば名前を伺いたい。だが、こちらから名前を聞くのも変な話だ。そう思っていると、男から名乗ってくれた。
「そういえば……まだ名前言ってませんでしたよね。俺、日永紫麻って言います。二十五歳です」
「二十五歳……ああ、俺は小幡です。二十八歳です」
「え。若いと思ってたのに……意外と……あれなんですね」
「ふふ、言いたいことはわかります。若く見られやすいんですよね」
なんとか和ませようと、軽く笑う。すると、日永も柔らかく笑った。
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