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佐野は、玲司から峰旗と話をするというメールを受け取ったあと、すぐさま日永に連絡をした。本当は首を突っ込む気はなかったのだが、もしものために一応監視しておいた方がいいと思ったのだ。我ながら、かなりのお人好しだ。
案の定、玲司が峰旗に対して怒りを露わにしていた。なんとなくだが、峰旗は玲司に対して下心があったのだと思う。
日永はそれを黙って見ていたが、玲司が頭を抱えていたときには玲司の元に駆け寄ろうとしていた。それを慌てて止めると、日永は本当に苦しそうな顔をして、こう言っていた。
『あんなに苦しそうな顔をしてるのに、側にいてあげれないなんて辛すぎる』と。
それがただの親切なのか、はたまた別の感情を持っているからなのかわからないが、日永が玲司のことを大切にしているということだけはわかった。
玲司も、幸せ者だ。
しばらく見ていると、玲司が立ち上がった。話が終わったんだと思って、そのまま見ていると峰旗が玲司の手を掴む。それを見て、日永が息を飲んでいた。
だが、玲司は峰旗の手を振り払い、駅方面へ向かおうとする。それを日永が追いかけ、佐野は一人で座っている峰旗の側へ向かったのだ。
日永が玲司のことを車に乗せたのを見届けてから、俯いたままの峰旗に声をかける。
「どうも。随分と大変そうですが」
玲司が元座っていたところに座ると、峰旗が驚いたように目を瞠る。その目は欲情で塗れていて、ずっと玲司にこんな目を向けていたんだと思うとゾッとする。
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