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「玲司さん……っ」
日永が、玲司のことを抱きしめる。あれから車に乗せられたあと連れてこられたのは日永の家で、玄関のドアを閉めるとすぐに身体を密着させてきた。
その仄かな温かみに、玲司はゆっくりと目を閉じた。
「日永……なんでいたんだ?」
「あいつ……佐野から連絡貰って。慌てて車で行ったんです」
「まじかよ。着いてこなくてよかったのに」
「よくないです。玲司さんになにかあったら俺の心臓が壊れますし」
規則正しい心音が聞こえてくるくせに、なにを言っているんだ。
玲司はそう思いながらも、実は安心していた。
あのとき、何故か猛烈に日永に会いたくなってしまったのだ。こういうとき、日永がいてくれたらどんな声をかけてくれるんだろうとか、なんて慰めてくれるんだろうとか。
実際にこうやって抱きしめられるとかなり安心する。やっぱり、こいつの隣は居心地がいい。
「……峰旗さんと話して、どうでした?」
嫌なことを訊かれても、何故だが心は安らかなままだった。
「驚いた。でも、嫌いになるわけではない。あいつ、根はいい奴だから。なにか理由があって、ああ言ってるんだと信じてる」
「……玲司さんは、本当に優しい人だ」
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